ライフデザイン・カバヤ株式会社
営業部 次長 淺野 祐介
「十勇士」――1年間で獲得した契約額の高い10名、つまり年間トップセールス10名の呼称です。毎年4月に行われる全体会議において全社員の前で表彰されるほか、歴代受賞者の名前と成績は各支店会議室にも掲出されるため、全社員の尊敬と羨望を集める存在なのです。
2022年に続いて2023年の2年連続1位。歴代受賞者でもわずか3人のみの連続1位金字塔を打ち立てたのは2009年入社、現在営業部次長の淺野 祐介(あさの ゆうすけ)さん。過去にも2020年3位、2021年2位と、連続受賞の快挙を成し遂げています。
現在は岡山支店の営業責任者としてリーダーシップを発揮する立場でもある淺野さんの新入社員時代の意外な挫折体験や仕事観、今後のビジョンについてお伺いしました。
―2年連続1位、おめでとうございます。いったいどんな新入社員だったのですか?
“1棟売る”までにとんでもなく時間がかかり、10人いた同期の中で最後の達成者でした。
―驚きです。今のお姿から想像がつきません。
営業職は“1年目で1棟売る”のがファーストステップ。同じ支店に配属された女性営業の方はあっという間に達成されたのに、私はまったく成果につながりませんでした。上司に同行してもらったりアドバイスを受けたりと親身にサポートしていただいたにもかかわらず、です。何が悪いのかもわからず、悔しくて悔しくて、会議の中で思わず涙がこぼれたこともありました。
1年の終わり12月にようやく1棟成約できて、さあこれからだ、と安心しました。ところが、2棟目の成約にもさらに半年を費やしてしまったんです。しかしこの半年間に意識を変えて取り組んだことが後々につながっていきました。
―具体的にどんなことをされたのですか?
「人からすべて吸収しよう」と行動を起こしました。営業成績の高い方、話がうまい方、いろいろな方に自分から働きかけて教えを乞いました。成功・失敗の体験を訊き、営業スタイルを目で追い、すべてを手帳に細かく手書きで残しました。当時は録音が気軽にできる時代ではなかったので。心がけていたのは、まるまる真似するだけではなく、自分の言葉やスタイルに落とし込み、自分らしさは失わないようにということ。
続けているうち次第に数字に結びつけることができるようになっていきました。2年目の終盤は半年で毎月1棟を売り上げ、年間販売棟数6棟を達成。以降12年連続で2桁の販売棟数を達成し続けています。
―気持ちの中で変化はあったのですか?
大きく変わったのは「お客様の背景を見る」ということです。よく「共通の話題を見つける」ことが営業のセオリーとされていますが、価値観はさまざまだし、今時は自己開示されたがらない方も増えています。とにかく話を注意深く聴くことでお客様が何に喜ばれるのか、何を求めているのかがわかるようになっていきました。そうなると、ただ一方的に提案することに抵抗感が生まれたんです。「喜んでいただけるなら、何でもやって差し上げよう!」とどんなことでも実行していました。若い自分を信頼していただくには、他社にはできない差別化も必要だと考えていましたしね。
―2年連続受賞のために工夫されたことはありますか?
決め手としていることは特にありません。当社の営業は “クセ者”だらけですから(笑)、受賞できるとも思っていませんでした。
ひとつだけ言えるとしたら「やり遂げる」こと、これだけです。「このくらいでいい」と自分に甘えた途端に終わる、と思っています。1棟成約できて「ああ良かった」と思うのはほんの一瞬、すぐに次のことを考えています。
3位を受賞したときは「これだけやってもまだ上がおるんか」と脱力した気持ちは今でも忘れられません。しかし運が良かったのが、翌年2位になった頃営業のエリア長を任せてもらえたこと。心が折れかけていたときに部下がそれまでの5人から30人に増え、責任感と一緒に「カッコ悪いとこは見せられん」と闘争心が生まれました。
実際は本当に大変で、部下のサポートに手を取られて自分の営業に割く時間がありませんでした。しかし逆に「30人の仲間」と捉えて、この状況をどう乗り越えるかを考えて立ち向かっていきました。新入社員時代もそうでしたが、越えられない壁なんて絶対にないと信じていました。
―コミュニケーションで心がけていることは?
「氣付く」こと。そしてそれを伝えることですね。もともと鈍感で気が回らない人間なのでプライベートでは叱られることも多くて(笑)。特に社員に対しては、相手のペースに合わせること、それからいわゆる“Youメッセージ”ではなく“Iメッセージ”で、「こうしてくれたら助かる」などと伝えるようにしています。
―こうありたい、と目指している方はおられますか?
誰か一人、という方はいなくて「この人のこういうところ」と部分的に取り入れています。尊敬する方はたくさんいますよ。ライバルは同年代なので本田圭佑と長友佑都と公言しています。
はっきりとした憧れの人やロールモデルが身近にいないのもフラットでいられる一因かもしれません。
―今後の目標は?
まずは岡山支店をNo.1にすること。あと一歩のところまでは来ていると感じているので、自分の背中を見せるのも当然のことながら、マニュアルではなく仕組みづくりで底上げを図りたいと考えています。わかりやすい指針があればどんどん伸びるポテンシャルを持っている人財ばかりですからね。会社の目標「西日本No.1」よりさらに上の目標も見据えて取り組んでいくつもりです。